滲みを拾い集める
鳴り響く開始が閉ざされたカーテンの向こう側を透視する.今日はどうしようか.食パンに影を挟んで食べるのも良い.無を味わうのも良い.苦い覚醒を飲み干したなら,それで十分である.
傘の開花前線にそそのかされて,私も雨の下位互換になってみようと思う.散りばめられたキラキラの,流れ閉じ込め透き通れ.透き通り,吹き抜けて,見えざるそれこそが数センチの続編を紡ぐのだろう.これを以て観察日記とする.もしかすると,無の種から無効な芽が出て,不可能が花が咲くかもしれない.無い風の隙をついたなら,空気をするりとかいくぐることもできるだろう.
封じられることに失敗した歌を聞くための秘術.抽象の空をふわふわと揺らいでいけば,そこは概念の音色で賑わっている.微睡みに降るかたちの雨のように,待ちわびる者たちを遊ばせてあげることができるといいな.こういう軽率な願いだけが,始まりを消し去るのだ.彼に会うことは二度と無いだろう.